作家:ぱず 作画(くろっちとしおぶー):まぁぺ

ねえ、くろっち。

なんだい? しおぶー。

ほら、あの雲を見て。

え? どの蜘蛛だい?

蜘蛛じゃなくて、空の雲だよ。

空……? わあ、綺麗だね。

綺麗だね。まるで、ハートみたいだね。
くろっちとしおぶーが見上げた空

本当だね。まるで、ハートみたいだ。

ねえ、くろっち。ボクさ。分からないことがあるんだよ。

何? しおぶーは、何が分からないの?

よくさ。心が強いとか、弱いとか言うでしょ。あれが、分からないんだよね。

心が強いとか弱いか。うん、確かに意味が分からないね。心が戦うってことなのかな? 派手にドンパチやるってことだよね。

たぶん、派手にドンパチはやらないと思うよ。
ボクが言いたいのはさ。心が弱い意味が分からないってことなんだよ。

心が弱い意味?

うん。強い心と弱い心があって。強い方が良いのなら、みんな強ければいいと思うんだ。それなのに、心の弱いウサギがたくさんいる。これの意味が分からないんだよ。

なるほどね。たぶんだけど。存在するってことは意味があるってことじゃないかな。

うん。確かに、そうかもしれないね。でも、どんな意味があるんだろう? 意味……? 意味か。意味を、メリットと言い換えても良いかもしれないね。

メリット。心が弱いことのメリット。うーん。そうだね。…………そうか。わかったぞ!

わかったの? すごいや、くろっち。教えてよ。

うん、いいよ。しおぶー。 心が強いとさ。ストレスを感じにくいでしょ?

うん、そうだね!

ということはだよ! 白髪が増えにくいってことじゃないかな!

…………たぶんだけどさ。それ、違うと思うんだ。

えっ? 嘘でしょ? これ、違うの?

うん、違うと思う。

なんで? なんで? 違うと思うの?

それはね。普通はさ、そこまで白髪を気にしてないからだよ。白髪を気にしないのなら、それはメリットとは呼べないよね。

そ、そうだったんだ……みんな白髪を気にしてないんだね。それは知らなかったよ。

うん。白髪はそこまで気にしてないはずだよ。でもね。くろっちのお陰で、分かった気がするんだ。

ええ? 何が分かったの? しおぶー。

くろっちは、心が強いとストレスを感じにくいって言ったでしょ?

うん。言ったよ、しおぶー。ボクは、確かに言った。

それは逆に言うと、心が弱いとストレスを感じやすいってことになるんだよね。

うん、そうなるね。でも、それがなんなのさ。

ストレスを感じやすいからこそ、見えてくるものがあるんじゃないかなって思ったんだよ。

ストレスを感じやすいからこそ、見えてくるもの? 一体それはなんなの? 何が見えるの? 幽霊なの? 幽霊が見えてるの?
くろっちの想像する幽霊

いいや。幽霊は見えてないと思うよ。そうじゃなくてさ。心が弱いからこそ、同じように心が弱い存在を理解してあげられるんじゃないかな。

え? 幽霊が見えないってことは分かったけど、それ以降の話が難しすぎて分からないよ。

たとえばさ。味覚のないウサギがいたとしてさ。そのウサギに、美味しい食べ物の話をしても、ピンとこないと思うんだ。だって、味を感じないんだもの。

うん。そうだね。味を感じないウサギに食べ物の話をしても、きっと分かりっこないよ。

それと同じでさ。弱さというのは、心が弱いウサギにしか理解できないんじゃないかな?

なんだ、まだ難しいぞ? つまり、どういうこと?

つまり、心が弱いウサギの方が、他のウサギに対して優しくなれるかもしれないってことだよ。

わあ、すごい。優しいウサギか。それはステキなことだね。

うん、とってもステキなことだよね。

心の弱さにも、意味があったんだね。

うん。意味があったんだよ。…………でもね。心が弱いからと言って。みんながみんな、優しいウサギになれるとは限らないからね。

…………えっ? じゃあ。結局、よく分からないってこと? しおぶー。

そういうことになるね。くろっち。






