作者:ぶきっちょ
初めて会ったのは、いつだっただろう。
たしか、ちょうど桜が満開を迎えた頃。
あなたは、私を見つけてくれた。
あなたのことは、一目見たときから気になっていたわ。
ちょっとやんちゃで、いたずらっ子を思わせる瞳。
夢中になると、すぐ周りが見えなくなるところ。
でも普段は、弟の世話や家事を手伝ったりする優しい性格。
だんだん知っていくうちに、どんどん好きになっていった。
でもある日、気付いてしまったの。
あなたが見ているのは、私じゃないっていうことに。
あれは私が、親友のミユと一緒に下校をしているときのこと。
私たちの方を向いたあなたが、熱を込めて見つめていたもの。
それは――ミユのことだった。
私じゃなく、ミユだったのよね。
そういえば、こんなこともあったわ。
ミユがとても悲しい目に遭ってしまったとき、必死で慰める私の後ろで、あなたも目にいっぱい涙を溜めていたよね。
私が泣いていたときは、そんなことなかった。
いえ、違うわ。
決して、恨んだりしてるわけじゃないの。
ただ、嫉妬してるだけ。
そして、ずっと考えているの。
あなたがどうしたら、私の方を向いてくれるのかって。
まだ小学生だけど、これが本当の恋だって確信してる。
あなたと出会って、私は今の仕事が嫌じゃなくなったの。
だって、頑張れば頑張っただけ、あなたに見てもらえると思うから。
活躍すれば活躍しただけ、見てもらえる時間が増えると思うから。
でも、不安もあるの。
この仕事で失敗したら、大怪我をするかも…ううん、最悪、命を落とすかもしれない。
そうしたら、あなたに二度と会えなくなってしまう。
じゃあ仕事辞めれば?って言われるかもしれないけど、それもできない。
この仕事を辞めてしまっても、あなたに会えなくなってしまうから。
こんな私の思いは、誰にも知られることなく消えていくんだと思う。
悲しいし、寂しいけど、どうしようもない。
生まれた世界が違ったから。
*
暗闇の中で体育座りをしている私の周りに、突然元気な音楽が響き渡った。
月曜日の18時30分。
これから30分だけ、彼に会える。この音楽は、その合図。
今頃彼の目には、曲に合わせて私とミユが魔法で怪獣を倒す場面が映っているだろう。
彼はこのアニメが、大好きだから。