タワーマンションの怪奇現象

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

タワーマンションって、住んでみたいと思う?

おいらは、高いところ苦手だからな。

タワーマンションなんて住んだら、毎日怯えそうだよ。 あははっ

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

子供が生まれたのを機にマンションを購入しました。新築30階建てのタワーマンションで、購入したのは8階です。

もっと上の階が良かったのですが、ローンの返済や地震のことも考えて8階にしました。上の階にいくほど値段は高くなりますので。

住人の年齢層は大体私と同じくらいの人たちで、小さいお子さんがいる人が多いです。マンションの敷地内に広い公園もありますので、昼間はよくそこに行って子供を遊ばせます。そうしていると、自然と同じマンションに住むママたちとも話すようになって、私の人生初のママ友も出来ました。

主によくお話するのは、9階に住んでいるAさん、2階のBさん、14階のCさん。そして27階に住むDさんです。

Dさんだけは20代中盤と若く、ご主人が10歳以上年上という若奥様でした。

ある日の午後、いつものように公園で子供を遊ばせ、私はママたちとおしゃべりをしていました。

その時、マンションの話になりました。各階の景色や間取りについて話していると、ふとAさんがこんなことを言い出しました。

「Dさん、27階だったわよね。私他のママから聞いたんだけどさ、27階の部屋、大丈夫?」

大丈夫?とは何のことだろうと私とDさんは顔を見合わせました。

「間取りや設備に問題はありませんが…」

おずおずとDさんが言うとAさんは、間取りとかじゃなくてね、と前置きして

「なんかね、夜中に変な物音がしたり、誰かがいるような気配がするって聞いたんだよね。家にいると、自分以外いないはずなのに誰かに見られているような…そんな気配がするって」

真顔で言うAさんに私たちは驚きました。

ここは最近できたばかりの新築マンションです。古い建物ならともかく、新築でそんな怪談話があるでしょうか。

そう思っていると、BさんもCさんも思い出したかのように話し始めました。

「私も聞いたことある。私、27階の知り合いってDさんだけだから他の階の人から聞いたんだけど、夜になるとカーテンの隙間から見られているような変な感じがするって…」

「何故かはわからないけど、28階や26階では聞いたことないわ。27階はそんな話あるよ」

私は初耳でした。Dさんもそうでしょう。大人しいDさんは少し怯えたような表情になりました。

「でも、本当かどうかは分からないわよ。あくまでも噂だからね」

Aさんはそう言って笑いましたが、私とDさんは笑顔になれませんでした。

翌日から雨が続き、公園には遊びに行けませんでした。他のママと外で会うこともなく、家の中で大人しく過ごしていました。

27階の話は、あれからどうなったんだろう。Dさんは大丈夫だろうか…。

そう思い始めた頃、Dさんから電話がありました。久々に聞いたDさんの声は、どこか暗いものがありました。

今からそちらに伺いたいと言われ、子供も一人で遊ぶのに飽きていた頃だったので「汚い部屋でも良ければどうぞ」と返事をしました。

10分もしないうちにDさんは家にやって来ましたが、若々しい顔には似合わない濃い隈を作って疲れた顔をしていました。

何かあったの?と聞くと、

「最近、夜になると…なんだか誰かに見られているような感じがするんです」

ぞくり、と私の背中に寒気が走りました。あの27階の話は本当だったのかと驚きを隠せませんでした。

「ずっと見られている気がするの。部屋の隅やカーテンの隙間から…。顔を洗っていると、鏡に何か映っているんじゃないかって怖くて…」

泣きそうな声で語るDさんの話は、生々しいものがありました。あんなの噂だよ、と笑い飛ばしてあげたい気持ちもありましたが、そう言える空気ではありません。

疲れているんだよ、うちで寝て行きな。と言って布団を敷き、夕方まで彼女を寝かせてあげました。

育児ノイローゼの一種なのかもしれないと考えていましたが、私の思惑を打ち消すかのようにその日からDさんの怯え方はエスカレートしていきました。

「私のことをじっと見ている何かがいるの…」

「窓の外に誰かいたの」

「夜になると、部屋中で物音がする。怖い…」

「枕元に立って、見ている人がいるような気配がして…」

私に電話をしてくるDさんの怯え方は尋常ではありませんでした。昼間も家から出ず、公園にも顔を出さなくなりました。

やがてDさん一家は、マンションから引っ越してしまいました。引っ越し当日に挨拶をしようと27階まで顔を出しましたが、Dさんは痩せ細り疲れ切った青白い顔をしていました。

Dさんがいなくなり、公園でおしゃべりするメンバーは4人になってしまいました。Dさんがいなくなって数日後に集まった際、Dさんの話になりました。

「Dさん、若いのにあんなに憔悴して…よっぽど怖かったんですね。やっぱり27階の怪奇現象って本当にあるんでしょうか」

なんとなく私が言うと、Aさんたちはクスクスと笑って

「何を言っているの?あんなの全部嘘に決まってるじゃない」

そうAさんが言い放ちました。

「高層階の若奥様をちょっとからかっただけなのに、本気にしちゃって出て行くなんて。臆病ねぇ」

けらけらと笑う彼女たちを見て思いました。

本当に怖いのは、怪奇現象ではない。

女の嫉妬と悪意なのだと……

 

霊感少女・黄泉子
なんだか、リアルな話だよっ。

恐ろしさと言うより、おぞましさを感じたっ。

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作品は著作権で保護されています。

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