夫の秘密

↑「あとで」は、しおり代わりに使えるよ↑

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

偶然出会って、惹かれあって、結婚する。

すごくロマンティックだね。

おいらも将来は、そんな結婚がしたいなっ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

夫とは2年間の交際を経て6年前に結婚しました。娘が一人生まれ、郊外の建売住宅で暮らす3人家族。今の日本のどこにでもいる普通の家庭だと思います。

私と夫の出会いは偶然でした。夫の職場も家も、当時私が住んでいたアパートからは遠いところにありましたが、私が仕事帰りにアパートの近所にあるラーメン屋で一杯引っ掛けている時に、仕事でこちらまで来ていた夫が偶然隣の席に座って話したのをきっかけに仲良くなりました。

今もそうですが夫は昔からよく気が利くで、私の好みなど言わなくても察してくれました。

夫と交際をスタートしてから何かと注意をしてくる友人とは疎遠になってしまいましたが、今こうして最愛の夫と娘と一緒に暮らしていけることを嬉しく思っていました。

夫に日記を見つけるまでは…

少し前のことです。夫が仕事に行き娘が幼稚園に行っている間、私は部屋の掃除をしていました。

夫の書斎のゴミ箱を掃除していると、本棚と机の隙間に何かが落ちていました。掃除している最中に落としてしまったのかもしれないと思い、隙間に指を挿し込み抜き出すと、それは一冊の大学ノートでした。

夫はパソコンをよく使いますが、ノートに何かを書き留めるという習慣は無かったように思います。それは私が知らないだけで、本当は書斎で作業をしている時に何かを書いているのかもしれない…

何が書いてあるんだろう…見てはいけないと分かっていても好奇心が勝ってしまい、私はノートを開きました。

そこには、細かい字でびっしりと日記のようなものが書き綴られていました。

最初のページの日付は9年前。私と出会う前です。

 

●年■月■日

××市の駅前で綺麗な子を見かけた。髪の色も髪型も服装も、僕の好みだ。気になって後をつける。●線の電車に乗って■駅で下車。アパートの名前は▲▲という。

●年■月●日

彼女の職場は××駅前の飲食店。毎日19時には上がる。週に一度■駅前のラーメン店か居酒屋で一人酒をしている。

●年■月▲日

郵便物から彼女の実家がK県だと判明。父の名前はJ。未来の義父。

●年▲月■日

最近の彼女の食生活は荒れている。燃えるごみの日にコンビニ弁当の容器が多い。和風パスタが好み。

ファッションブランドAのレシートを発見。洋服はそこで買っているようだ。

■年●月●日

彼女がラーメン屋に入ったのを確認して僕も店に入った。隣に座り声をかける。君にとっては初めまして、僕はずっと君を知っている。

■年×月●日

彼女の友人が、僕と彼女の交際に意見を言っているようだ。邪魔なのでいなくなってもらう。

▲年●月■日

妻が妊娠して仕事を辞めた。家で何をしているか気になるからカメラと盗聴器をセットしておこう。ついでに車にGPSも。

◆年■月●日

イヤイヤ期の娘に疲れているようで、日中独り言が多い。カメラと盗聴器をセットして正解だった。台数を増やそう。

 

他にも、私の独身時代の生活や結婚後のことも事細かに書かれていました。

「何よ、これ……」

体中から血の気が引き、吐き気がしました。

よく気が利くと思っていた長所も、偶然による出会いも、すべては夫の病的なストーカー行為の賜物だったのです。

見てはいけないものを見てしまった、知らない方が良かった…。私は隠すようにノートを元の場所に戻し、書斎から出て行きました。

今後のことを考えなくてはならない…あのノートを見て私はそう強く思いました。離婚するにしても、あのノートの写しくらいは持っていないといけない。

二度と見たくないものでしたが、翌日私は夫が仕事に行っている間に書斎に入り、ノートを見ました。

そこには、昨日の日付で書かれた文章がありました。

 

〇年■月◆日

妻がこの日記を読んだ。カメラの台数を増やしておいて良かった。しかしこのままだと、妻は僕から離れてしまうだろう。

何か対策を考えなければならない。

 

その日のうちに、私は娘を連れて家を出て行きました。

新幹線で数時間の場所にある兄夫婦の家に転がり込みましたが、きっと夫は近いうちに迎えに来るでしょう…

私の行動など、夫にはお見通しのはずですから…

 

霊感少女・黄泉子
えええ……

出会いから、偶然じゃなかったんだね……

怖すぎだよっ。

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