都市伝説「おゆらいさん」

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

ねえ、おゆらいさんって知ってる?

今、一部の小学校で、おゆらいさんっていう遊びが流行ってるみたい。

どんな遊びなんだろう。

おいらもやってみたいなっ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

私には2人娘がいます。

上のお姉ちゃんは現在中学生ですが、その子が小学校6年生の頃に生徒たちの間で変な遊びが流行っていました。

「おゆらいさん」というもので、主に高学年の女の子たちの間で流行っているものでした。

「おゆらいさん」が生まれた経緯は分からないのですが、それは校内にある今は使われていない教室の中でおこなう放課後限定の遊びでした。遊び…と言うのも、少し違うかもしれません。

お姉ちゃんから聞いた話だと、教室の真ん中に天井が映るように鏡を置き、その周りに食塩(理科室や家庭科室から持ち出していたようです)を撒いて、鏡を囲むように数名で立って手をつなぎます。

そして「おゆらいさん、おゆらいさん。是非是非こっちに来てください」と3回声を揃えて唱えるというものです。

私の世代だと、似たようなもので「こっくりさん」というのがありましたが、恐らく似たようなものなのでしょう。こっくりさんだと質問に答えてくれるという特性がありましたが、どうやら「おゆらいさん」は何かをしてくれるわけではないようです。「こっちに来てください」と言っていますので、私たちが住んでいるところとは違う世界の存在なのでしょう。

いったいそんなものの何が楽しいのかと思っていましたが、そういった降霊術ごっこをして、後日「なんだか霊感強くなっちゃったかも!」「変な夢を見たから、きっとおゆらいさんの仕業だ!」と友達同士で怖い怖いと言いながら楽しむというのが、多感な年ごろの女の子たちにはとても楽しいものとして定着していました。

私を含む保護者達は、いつの時代も似たようなものが流行るのだなと感慨深い気持ちでいましたが、だんだんとそうも言えない事態になっていきました。

「おゆらいさん」をやった生徒たちに奇妙な現象が起き始めたのです。

最初のうちは怖い怖いと言って楽しんでいた生徒たちが、

「天井からいつも誰かに見られている気がする」

「鏡に知らない女の子が映っていた」

「最近、目がギョロギョロしている女の子に追いかけられる夢を見る」

といったことを訴え始め、小さな物音にも怯えるようになったのです。中には学校に来なくなった子もいます。

そして、私の娘…上のお姉ちゃんも日に日に何かに怯えるようになりました。

ある夜、お姉ちゃんが夫婦の寝室に入ってきました。いつもは一人で寝ているのにどうしたの?と聞くと、顔を真っ青にして泣きそうな声で言いました。

「誰かが、ベッドの周りを歩いているの。ずっとぐるぐる回ってて怖い。一人で寝たくない」

ガタガタを小刻みに震える姿に、この怯え方はただごとではないと感じました。

私以外の保護者も同じ思いを持ったようで、学年主任も交えた保護者会が開かれました。そこでは、子供達の間で流行っている「おゆらいさん」なるものの扱いをどうしていくかが議論になりました。

誰かが「おゆらいさんをやっている教室を見てみよう」と言い出し、先生に案内されてその教室へと向かいました。

教室近付くにつれて、私は何か寒気のようなものを感じました。何かが体に這っているような、なんとも心地悪い空気です。それは次第に濃くなっていき、教室の前についた頃には息苦しさのようなものも感じました。

誰もが、これは危険だと肌で感じたでしょう。

「ここ、立ち入り禁止にしましょう」

絞り出すように学年主任が言いました。

翌日、業者に鍵を交換してもらい教室は立ち入り禁止になりました。そうしたことで生徒たちの間の「おゆらいさん」ブームも去り、お姉ちゃんが卒業する頃にはみんな元に戻っていました。

しかし、最近同じ小学校の高学年に上がった下の子が私にこう言いました。

「お母さんの鏡貸して。友達とおゆらいさんを呼ぶの」

まだまだ生徒の間では、おゆらいさんはひっそりと行われているようです。

 

霊感少女・黄泉子
やっぱ……おゆらいさん、やりたくない。

しかも、この話の何が怖いってね。

これ……実話だそうだよっ!

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作品は著作権で保護されています。

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