ファミレスのバイト

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

おいら、ファミレスのバイトしてみたいな。

ウェイトレスは、ちょっと憧れるよ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

大学1年生の6月に、家の近所にあるファミレスでアルバイトを始めたんです。

家族で何度か食べに来たことがあって、その時にスタッフ募集中のポスターを見て応募しました。

もう大学生なんだし、メイク用品とか洋服とか好きな物を、自分で稼いだお金で買いたいじゃないですか。私の友達はみんな高校生の時からファーストフード店やコンビニでアルバイトをしていて、ちょっと羨ましかったんです。

話が逸れてしまいましたね。このファミレスはお店の入り口の反対方向に事務所への入り口があります。狭い門を開けて、さらに5~6mほど棺桶型の冷凍庫が置かれているせいで狭くなった道を通って、やっと事務所のドアに辿り着けます。

業務用の冷蔵庫や冷凍庫が邪魔で、お客様から見たら何があるのかよく分からない裏口です。

夜になるとキッチンから漏れる僅かな明かりしか無く、事務所まで行くのが少し怖い場所です。私と同じバイトの子たちは、夜に一人で事務所に行きたくないね…とよく話してました。

この事務所はオートロックになっており、一度閉まると内側から誰かに開けてもらうか、鍵を使って開けることしか出来ません。

事務所内には金庫もありますので、防犯のためにそうしているのでしょう。外に防犯カメラもついていますが、今のご時世は用心するに越したことはありませんよね。

私たちのような学生バイトは、レジの中に置かれている鍵で出入りをしていました。

 

夏休みに入った頃、小遣い稼ぎと仕事を早く覚えるため、私は昼から夜までみっちり入っていました。

昼間は配膳やオーダー、夜は片付けをします。

日中は6名くらいで回しますが、閉店後の片付けは基本的に2人だけでおこないます。1人はキッチン、1人はフロアの片付けです。

その日は、私と店長の2人だけで夜の片付け作業をしていました。

23時を過ぎた頃に、私が担当していたフロアの作業がすべて終わりました。私は店長に、そろそろ上がってもいいですか?と聞きました。

「いいよ。俺は食材の在庫確認があるから、事務所は自分で開けてね」

店長から許可が出たので、お疲れさまでしたと挨拶をしてレジにある事務所の鍵を持ってキッチンを出ました。

外に出ると辺りは真っ暗で、夏特有のじめっとした熱気が肌にまとわりついて来ました。

狭い狭い棺桶冷凍庫の間をすり抜けて、事務所へと歩きます。昼間は気にならないんですが、夜だと暗く狭いせいもあり、とても不気味に見える場所です。

事務所の中に入ると、パソコンで打刻をし制服から私服に着替えるため更衣室(といってもカーテンの仕切りがあるだけですが)に入りました。

その時です。

コン、コン、コン…

小さくドアをノックする音が聞こえて来ました。店長がパソコンをいじりに来たのかな?と思い、まだ服を脱いでいなかったのですぐにドアを開けました。

しかし、外には誰も居ません。辺りを見渡しても、誰かいるようには見えませんでした。

どこか近所の家のノックの音と勘違いしたのかもしれない…と思い、ドアを閉めました。

着替えようと更衣室に戻った、その時…

コン、コン、コン…

また、ノックの音が聞こえて来ました。

近所の家からではありません。どう聞いても、この事務所のドアを叩く音です。

「店長?店長ですか?」

声をかけてみましたが、何の反応もありません。そもそも、店長なら自分の鍵を持っていますので、わざわざノックして私に開けてもらう必要が無い…誰かが着替えている可能性がある時は、大きな声で「入るよ!」と言いながら入って来るような人です。

そっとドアを開けて外を見ると、やはり誰もいません。

もしかして悪戯…?

私がノックを聞いてドアを開けるまで、ほんの数秒です。その間にこのドアから、あの狭い冷凍庫の隙間を縫って出て行くことが可能かと言われると…この暗がりでは不可能でしょう。

店長の可能性も、悪戯の可能性も低い。

それに気付いた瞬間、体中にゾッ…と冷たいものが走りました。

これ以上ここにいたくない…!私服に着替えることもせず荷物を取って、その日は制服のまま家に帰りました。

 

それから2日後、また私は昼から夜まで入っていました。

前と同じく店長と2人でした。私の作業が終わったのを確認すると、店長は早く上がれと言ってきました。

あの夜のことを思い出すと、とても一人で事務所にいることなんて怖くてできません。

私は思い切って、店長に聞いてみました。

「あの、店長。以前夜の片付けで入った時なんですけど、夜上がって事務所にいると、誰かがドアをノックしたんです。でも開けると誰も居なくて…私なんだか怖くて、一人で事務所にいたくありません」

お前何馬鹿言ってんだ?と返って来ると思って店長の顔を見ると、店長は大きく目を見開いて、顔を青くしていました。

「お前それ、こないだ初めてだった?」

「…はい。それまでは一度もそんなことありませんでした」

「そう。あんまり気にしないで。ノックされても返事したり開けたりしなくていいから」

そっけない返し方に、違和感を覚えました。まるでこれが、初めてのことではないというような反応です。

「店長。どういう意味ですか?あれ何なんですか?」

「いやマジで気にしなくていいから。他のバイトにも言わなくていいからね」

やっぱり、何か隠している…。食い下がろうとした私の言葉を止めるように、店長は「それと…」と言いました。

「ノックされた時、窓の方は見るなよ?絶対見ない方がいいから」

その日以降、私は夜にシフトを入れなくなりました。次第に昼間でも事務所付近の空気が不気味に感じてしまい、結局夏休みが終わる頃にバイトを辞めることにしました。

バイト最終日、店長が事務所で本部のマネージャーと電話をしているのを聞きました。

「そうなんですよ…えぇ、えぇ、ちょっとね、やった方がいいかもしれないです。お祓いとか…」

他の学生バイトにこのノックの話は一度もしたことがありません。

なので、あの夜ドアを叩いたのが何だったのかは今も分かりません…店長は「窓の方を見るな」と言っていました。

あのノックが聞こえた時、窓の方を見たら何が見えるんでしょう…知らない方が良いものに違いありません。

 

霊感少女・黄泉子
うっ。

ファミレスのバイト、怖くてできなくなりそうだよっ。

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作品は著作権で保護されています。

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