女子トイレにまつわる怖い話

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

考えてみると、トイレって怪談の宝庫だよね。

とくに小学校の女子トイレには、花子さんが出るって噂を聞いたことあるよ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

小学校のトイレは、何かと怖い話が付き物です。

トイレの花子さんなんて、今では手垢のついた怪談話と言われていますが「女子トイレの怖い話」としてはシンプルかつ怖いという、理想的な怪談と言えます。

私が通っていた小学校にもトイレにまつわる怖い話は存在していました。それは、トイレの花子さんのようなものではなく、もっと捻りの効いたものです。

3階の女子トイレで用を足すと、誰かの声が聞こえて来る。

これだけだと、とても抽象的な物です。

「誰かの声」といっても、同じようにトイレに入って来た子達の話声や、隣の個室に入って来た子の独り言かもしれません。

しかし噂によると、それはそういった声ではないようなのです。

その噂話が流れていたのは、私が通っていたI県の小学校です。その小学校は1階は1年生と2年生、2階は職員室などの先生たちが使う部屋、3階は3年生と4年生、4階は5年生と6年生と、分かりやすく分かれていました。

3年生に上がった時、ずっと仲良しだったAちゃんと同じクラスになれて喜んでいましたが、あのトイレを使わないといけないのかと暗い気持にもなりました。

ところが、例の3階のトイレを使っても声など聞こえて来ません。私以外の女の子たちも怖がっていましたが、実際に声を聞いたという子は5月の段階では誰一人いませんでした。

同級生の中には、絶対秘密を暴いてやると息巻いていた子もいて、そういう子たちにとっては肩透かしを食らったようなものだったでしょう。

3年生に上がった時に私は卓球クラブに所属しました。同じクラブの上級生に3階のトイレについて聞かれたことがあります。恐らく、野次馬根性のようなものだったのでしょう。

「ねえ、3階のトイレって本当に変な声するの?」

「幽霊が出るって聞いたことあるけど、誰か見た子いる?」

何かを期待しているような目で上級生たちは聞いてきましたが、私は一度もトイレでそういう体験をしたことが無かったので、良い返事をできませんでした。

逆に上級生から話を聞くと、

「トイレで用を足していると、呻き声が聞こえて来る」

「自分以外いないはずなのに足音が聞こえる」

「苦しそうに呼吸をする音が聞こえる」

など、人によって言うことは様々でした。噂話なんてそんなものなのでしょうが、小学生の女の子にとっては気味が悪くもあり、好奇心をくすぐられる愉快なものでもありました。

担任だったF先生にAちゃんと一緒に詰め寄ったこともありましたが、

「うぅん…先生、そういうのは怖くて駄目だなぁ」

とはぐらかされて終わりました。若い男性教師なのに頼りにならないね!派手な靴を履いているのも見栄っ張りってだけだわ!とAちゃんと愚痴ったものです。

しかし6月に入った辺りに変化がありました。隣のクラスの子が、放課後に女子トイレに入った際に、誰もいないはずなのに変な声が聞こえて来たと女の子たちに話したのです。

「私がおトイレに入ってしばらくしたら、なんだか呻き声のような、変な声が聞こえて来たの。なんて言えばいいのかな…。あぁ、あぁ…って小さく掠れたような声だった」

その話は3年生の女の子たちの間で話題になりました。やがて、他の女子生徒からもトイレの声についての証言が出始めたのです。

「トイレの上から覗き込まれている気配がする」

「何かを擦るような音がする」

「うぅ、うぅ…って声がした」

人によって様々ですが、一人でトイレに入った時に起きる現象に間違いありませんでした。

周りは学校の怪談は本当だった!と盛り上がっていましたが、私もAちゃんもその現象に得体の知れない気持ち悪さを感じていました。ただの階段にしては、幽霊話にありがちな浮世離れしたものが不足していたのです。

 

夏休みを目前にした7月の中旬、私とAちゃんは放課後に図書室で読書感想文に使う本を探していました。遅くまで探していましたが、結局良いのが見つからず、週末に町の図書館に行って探そうと言って帰り支度を始めました。

「あ、ごめん。私ちょっとトイレ行ってくるね」

Aちゃんがそう言って、一人でトイレへと行ってしまいました。彼女が行ったのは3階の女子トイレです。

私は何か嫌な予感がしました。いつもなら5分もしないで戻って来るAちゃんが、10分経っても戻って来ません。

何かあったのかもしれない…。ランドセルを廊下に置いて、例の女子トイレへと向かいました。

この校舎のトイレは割と新しいものなので、薄暗さや陰鬱とした雰囲気はしないはずなのに、どこか気味の悪さが漂っています。それはあの妙な噂のせいでしょう。

ゆっくりと扉を開けると、右側の2番目の個室がしまっていました。そこにはきっと、Aちゃんが入っているに違いありません。

Aちゃん、いるの…?そう声を出そうとした瞬間、私は出そうとした声を飲み込みました。

はぁ…はぁ……

トイレ中にかすかに聞こえる、妙な息遣いを感じたのです。

それは、息苦しさに呻くような、そんな声でした。

ぞぞぞ…っと背中に悪寒が走り、自然と自分も息をひそめるようになりました。

Aちゃんが入っている個室以外、どこも閉まっていません。この空間には、私とAちゃん以外は見当たらないのです。

ふぅ…ふぅ……

それでも、かすかにではありますが息遣いは聞こえて来ます。

足音を立てないように、ゆっくりと歩を進め、Aちゃんの入っている個室の隣を覗き込みました。誰も見当たりません。

他の個室を改めても誰の姿もありませんでした。

このトイレには、見えない誰かがいる……

そう思った時、掃除用具入れの底の隙間から明るいベージュがちらりと見えました。

この派手な色…派手な靴…

私はもしやと思い、ゆっくりと近付き、掃除用具入れの高い位置にある隙間をじっと見詰めました。

そこには、冷たく私を見下ろすF先生によく似た目があったのです。

私は声をあげることも出来ず、Aちゃんの入っている個室を叩き無理やり彼女を引っ張り出すと、急いで学校を後にしました。

 

女子トイレの変な声の正体…それは私の担任のF先生のものだったのです。

F先生は夏休み明けにいなくなってしまいましたが、大人になった今思い返すと、彼はトイレの掃除用具入れにこもって、用を足す女子に性的な興奮を覚えていたのかもしれません。

あの荒い息遣いや呻き声は…想像したくもありませんが、子供の排泄行為を見たり聞いたりして自慰に耽っていたのか…

F先生が去ってから、あの女子トイレの噂が消えてしまったかというとそうでもなく、私が卒業したあとも学校の怪談として残っていました。

3階の女子トイレで用を足すと、その写真を売られてしまう…

そんな風に姿を変えて…

 

霊感少女・黄泉子
ええーーー。

不意打ちだよっ。

怪談だと思ってたよっ。

こんなのヤだ。 怖すぎ!

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