ハンカチ落とし

↑「あとで」は、しおり代わりに使えるよ↑

  前:幽霊タクシー

 


 

作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

ハンカチ落としってゲーム知ってる?

おいら、小学校時代によくやったよ。

今日は、ハンカチ落としにまつわる怪談だよ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

ハンカチ落としっていう遊び、やったことありませんか?

私が子供の頃、クラスのお楽しみ会でよくやっていたゲームです。フルーツバスケットかハンカチ落としのどっちかでしたね。

ルールは単純で、鬼を1人決めて他の全員は椅子に座るか体育座りをして、円を描くようにして座り顔を伏せます。鬼はみんなの背後をぐるぐる回り、誰かの後ろにハンカチを落とします。

ハンカチを落とされた人は、それを持って鬼を追いかける…鬼は逃げてハンカチを落とした人の座っていた場所に入り込めたら、鬼交代です。

今度は、ハンカチを落とされて鬼を追いかけていた人が鬼になります。

ハンカチを使わない場合は、肩や頭を軽くタッチするようにします。

鬼ごっことは違うスリルあるというところがウケて、子供に人気がありました。

 

私が女子高に通っていた時に、友人たちと「小学生の時にハンカチ落としってやらなかった?」という話でも盛り上がりました。

やってたやってた!懐かしい!と近くて遠い思い出話に花を咲かせたものです。

みんな違う小学校に通っていましたので、それぞれの学校のマイルールもあり、ハンカチ落としという単純なゲームの汎用性の高さに驚かされました。

「やっばい、ハンカチ落とし超面白いね!ちょっとやりたくなってきた!」

「いいね。折角だしやってみようよ。放課後だと部活ある子もいるし、昼休みの方が人数集まりそうじゃない?」

「じゃあ他の子にも聞いてみるね」

女子高生の行動力は驚くべきものがあります。

なんとなく面白そう。ちょっと面白そう。馬鹿みたいで面白そう…

そんなどうでも良い理由で、盛り上がり、なぜか一致団結して遊びも全力で取り組む…。男子とは違う意味での子供っぽさがあったのだと思います。

私は同じクラスの子たちにハンカチ落としの話をすると、クラスの半分ほどが「懐かしいからやりたい」と言って協力してくれました。

あとの半分は、昼休みに用事があったり部活の集まりがあって昼休みは教室にいない子たちでした。

ざっと10人は集まったので、ハンカチ落としにはちょうど良い人数です。

 

翌日の昼休み。ハンカチ落としをする生徒は手早く昼食を食べ、机を移動させて準備をしました。

今回は「椅子を使用、ハンカチではなく手で肩をタッチする」というルールでやることになりました。

じゃんけんで最初の鬼は宮村さんに決定しました。

宮村さん以外は椅子に座り、目を瞑って顔を伏せます。

「え~誰にしよっかな~」

クスクスと笑いながら、宮村さんは私たちの背後をぐるぐると回り、私たちも肩を叩かれないかワクワクしながら待ちます。

やがて誰かが肩を叩かれたのでしょう。キャーキャーと甲高い笑い声をあげながらバタバタと走り回って、宮村さんから次の人へと鬼が移りました。

そんな感じのことを何度か繰り返し、笑い過ぎて喉が痛くなってきた頃に、私の友人のミホが鬼になりました。

ミホのことだから、私の肩を叩くかもしれない…と思い、無意識のうちに顔がニヤニヤしていました。

背後で誰かが歩く気配がします。2周ほどした時、私の首筋に冷たい何かが触れました。

ミホが私をタッチした!

そう思って目を開き顔を上げると、ミホはかなり離れたところから驚いた顔で私を見ていました。

「ちょっと~、勝手に目ぇ開けないでよ」

「え?ミホ、さっき私の首にタッチしたよね?」

「は?してないし。私まだ誰にもタッチしてないよ」

ミホは冗談が好きな子でしたが、真顔で言い返している様子を見ると、冗談を言っているように思えませんでした。

きっと自分の髪の毛が触れて勘違いしたのだろうと思い、また顔を伏せていると、ミホがみんなの後ろを歩き回る音がかすかに聞こえて来ました。

数秒後、誰かが声を上げました。

「うわ!冷たい!」

反射的に顔を上げると、私以外の子も顔を上げて声を出した子に視線を向けていました。

「ちょっとミホ、首はやめてよ!ってかアンタ、冷え性?めっちゃ手冷たいんだけど」

「私触ってないし。それに私冷え性じゃないってば。私の手、冷たく無いよ」

ほら、触ってみてよ!と戸惑った様子で手を差し出すミホ…みんなでミホの手を触って見ると、子供の手のように温かく私が感じた冷たさとは真逆のものでした。

「本当だ。すごい温かい」

「でしょ?私、まだ誰にもタッチしてないよ。本当だってば!」

私たちの反応に一番戸惑っているのは、ミホ本人でしょう。しかし、私も他の子たちも何かおかしな空気を感じ始めていました。

どうする?ゲームやめる?とヒソヒソと話し始めましたが、ミホのリクエストでもう一回だけやってみることにしました。

私たちはまた顔を伏せると、ミホが歩き出します。

私はこっそり目を薄く開いてチラチラとミホが歩いているのを確認しました。

その時…私の視界に、ミホのものとは違う誰かの足…三つ折りソックスを履く女子の足が見えたのです。

「…ちょっとストップ」

私が声をかけると、ミホは立ち止まり。みんなも顔を上げました。

「今、誰か歩いてた」

「私みんなの後ろ回ってたけど」

「ミホじゃない。ミホ以外の、私たちの中にはいない足が見えた…」

何それ、どういうこと?とざわつき出した時、私の右から4番目に座っていた宮村さんが

「私も、何か見えた。ちょっと薄目開けて見てたんだけど、ミホちゃんの後ろを歩くように、三つ折りソックスの足が歩いてた…」

と言いました。彼女は、私と同じものを見ていたようです。

宮村さんが発言してから、場の空気は一瞬にして凍り付きました。得体の知れない不気味な空気を、誰もが感じたからでしょう。

今この場には、ハンカチ落としをしていた10人以外に“もう1人”存在する…

首に触れた冷たい手の持ち主が…

誰かが音頭を取るまでもなく、無言のままハンカチ落としはお開きになりました。

その日以降、私たちは教室の中でハンカチ落としのようなゲームをやって遊ぶことはしませんでした。

そして、教室の中にいると“もう1人”誰かがいるような気配を感じるようになったのです。それは誰も口にしませんでしたが、みんな感じていたと思います。

私たちは、ハンカチ落としというゲームのつもりでしたが、もしかしたら“もう1人のクラスメイト”を呼び出す降霊術をしてしまっていたのかもしれません。

 

霊感少女・黄泉子
こんなの読んじゃったら、おいら、もうハンカチ落としできないよッ。

  前:幽霊タクシー

  次:氷の中に

作品は著作権で保護されています。

\ シェアしよう /