永遠のご予約席

↑「あとで」は、しおり代わりに使えるよ↑

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作画:chole(黄泉子)

 


 

霊感少女・黄泉子
とりゃっ。 あははっ。 黄泉子(よみこ)だよ。

今回の話は、バーのお話みたいだよ。

おいらはまだお酒飲めないから、バーには行けないんだ。

自分に関係ないと、安心して読めるよっ。

 

これは、28ノベルだけで読むことができる怖い話です。2ちゃんねるのコピーではありません。

 

社会人になりたての頃、東京のとあるショットバーの常連になっていたことがあります。

そのショットバーは、中年のマスターと若い女性バーテンダーの二人で切り盛りしていて、店の規模も店員の数相応の小さなものでした。カウンター席が10席、奥に小さなテーブル席(ほぼ個室)がある程度。

東京のショットバーというと、チャージ料もさることながら、ショートカクテルたった1杯で1500円…と新入社員にはハードルの高い値段設定の店が目立ちます。しかしこの店は、非常にお財布に優しい料金設定だったため、私以外にも若い常連客が多い店でした。

週に3回ほど通っていましたが、私はこの店が満席になるところを見た事がありません。というより、絶対にこの店は満席にならないのです。

なぜなら、カウンター席の一番端の席はいつも「ご予約席」のカードが置かれており、誰も座れないようになっていました。

最初は、他の常連さんの専用席かと思っていましたが、誰かが座っているところを見たことがありません。

「あの席、なんでいつも予約席なんですか?」

と、女性バーテンダーに聞いた事があります。彼女は苦笑いをしながら、言いました。

「駄目なんです、あの席。座ると良くない事ばかり起きるんですよ。怪我をしたり、事故に遭ったり、変な物音を聞いたり。とにかく良くないんです。だから、誰も座っちゃいけないんです」

だったら撤去すればいいのに、とも思いましたが、それはそれで「良くない」のでしょう。

いわゆる、あの席は「呪いの席」なのです。

その後私は転職をし、多忙な日々を過ごしていました。いつしかあのバーにも通わなくなり、後輩が出来たくらいの頃にはもうバーは無くなっていました。代わりに、そこにはラーメン屋が出来ており、つい懐かしくなり仕事帰りに寄ったことがあります。

カウンター席だけの狭い店内、そのカウンターの一番端には「予約席」の札が置かれていました。

あのバーの席と同じ位置です。

私はゾッ…と寒気のようなものを感じながら、バイト店員に「なんであそこは予約席なんですか?」と聞きました。若いバイト店員は言いました。

「あの席、駄目なんすよ。座ると事故ったり変なのについてこられたり、ひどい目に遭うんすよ」

きっとこの場所は、どんなに店が変わっても「予約席」を外す事はできないのでしょう。

そこに「だれか」がずっといるから……

 

霊感少女・黄泉子
ラーメン屋に変わってたって……。

ラーメン屋なら、おいらも行けちゃうっ。

全然安心できないよっ。

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作品は著作権で保護されています。

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