作画:chole(黄泉子)
私には1歳4ヵ月の息子がいます。初めての子なので可愛くて仕方ないのと同時に、不慣れな育児に日々悩まされています。
息子は1歳過ぎたくらいから歩き始め、色んなところを歩きたがります。歩いているとご機嫌で、どんな些細なことでも楽しいらしくずっとニコニコしています。
とくに人に出会うと相手の顔へ視線を向けて、くしゃくしゃっと笑うことが多いです。スーパーや公園、児童館に行くと色んな人に出会いますので、目が合うたびに笑っています。年配の方なんかは「よう笑う子だねぇ。人見知りしないのねぇ」と優しく声をかけてくださり、育児に追われている私にとっては数少ない、夫以外の人とのコミュニケーションです。
いつも笑顔で元気な息子ですが、少し前に高熱を出しました。赤ちゃんが熱を出してしまうのは決して珍しいことではありません。最初は手足口病を疑いましたが、医者の見解でそれはないと言われました。しかし、医者に原因や病名を聞いても、
「赤ちゃんは急に熱を出すこと多いから、大丈夫だよ」
と言うばかりです。2日ほどして熱が引いて食欲も出て来たので、一安心と思っていましたが、熱を出して以来息子の様子が変わったように思えるのです。
壁や誰もいない空間に向かって、ずっと何かおしゃべりをしている。
人に出会っても、ニコニコしたり泣き叫んだり、怒ったように金切り声を上げたり…
日々の成長が速い赤ちゃんにはよくある事なのかもしれません。
手がかかるようになりましたが、これも我が子の成長なのだと言い聞かせていました。
しかし、ある日のこと。私が家の中で家事をしていると、ペタペタと息子が歩いて私の方へとやって来ました。
少しムスッとした顔です。絵本に飽きちゃったかな?かまってほしいのかな?と思って、家事をやる手と止めて近付いていくと、息子は私をじっと見つめて笑いました。
その笑顔は、いつも見ていた屈託のない笑みではありません。ゆっくりと、幼い顔に張り付かせたような「ニタリ…」という粘着質な歪んだ笑みでした。
初めて見る息子のねっとりとした歪んだ笑顔に、私は背筋をゾクリとしました。
乳幼児らしからぬ表情は、まるで何かが乗り移ったような異質さを持っていました。
息子はあの高熱を出した日以来、この笑顔と奇妙な行動のせいで、私は息子を息子として見れなくなってしまいました。
そしてある日、息子を昼寝させて私も一緒になって眠った時におかしな夢を見ました。
息子と思われる赤ちゃんが手に人形を持ってじっと私を見下ろしています。ゆっくりと顔を歪ませて「二チャリ…」と気味の悪い笑みを浮かべながら、人形の腕を引きちぎるのです。そしてその人形は、私の妹にそっくりでした。夢の中でハッと息を呑んだ瞬間、私は目を覚ましました。
そしたら息子が、私の隣で「ニタァ…」とした不気味な笑顔で私のことをじっと見つめていました。
この子には、何かが憑いている。
そう確信しました。後日、妹が交通事故で腕を怪我し切断することになりました。
その腕は、あの時夢の中で息子が引きちぎった人形の腕と一致していました。
あれは偶然なのか、なんらかの力が働いたのか。それは今も分かりません。
このまま息子が大人になったらどうなるんだろうと、不安です。いったい何が息子に憑いているのか……
現在進行形っぽい終わり方も嫌だよー。
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笑顔の子供は可愛いよね。
赤ちゃんの笑顔見ると、幸せな気分になるっ。
でも、今回は……怖~い笑顔のお話だよ。