前:妖怪ぶるぶる
作画:chole(黄泉子)
裏拍手ってあるじゃないですか。
逆拍手とも言いますけどね。
手の甲をパチパチと合わせるんですが、知ってます?
死者がする拍手なんて言われてる、あれです。
僕、あれが苦手なんですよ。
いやね、僕がまだ二十歳そこそこの頃にね。
友達四人で心霊スポットに肝試しに行ったんですよ。
みんなでバカ騒ぎしながら、車で行きました。
ま、心霊スポットでは何も起きませんでした。
怖いムードを楽んだだけでしたね。
でも、僕らはテンション上がってしまいまして。
そのまま一人暮らしをしてる友達の家に行ってね、酒飲みながら怖い話をして遊んだんです。
雰囲気出すために、部屋を暗くして。
一人一人怖い話を披露していくんですが、一話終わるたびにみんなで裏拍手(逆拍手)をしてたんです。
「こえー」とか言いながら、パチパチパチって手を逆さにして叩くんです。
まあ、これも雰囲気出すためにやってたんでしょうね。
若者特有の悪ノリです。
何話くらい話したかな。
十話以上は話したと思います。
素人なのに、けっこう怖い話のストックあるでしょう?
いやなに、中身はどこかで聞いたことがあるような話です。
いわゆる都市伝説みたいな話です。
それでも、肝試し後ってこともあり、大したことない話でも大盛り上がりできるんですよ。
突然……その時は来ました。
友達の一人がバタっと倒れたんですよ。
その場にいた全員が、「あ、こいつ。ふざけてんな。」って思いましたね。
「つまんねーよ。」とか「そんなんじゃビビんねえから。」などと口々に言ってました。
でもね、倒れた友達が一向に起き上がらないんですよ。
さすがに、「これはマジのやつか?」と思い、誰かが電気をつけました。
そしたら、そいつ。
白目向いて、泡吹いて倒れてるんです。
「こりゃヤバい」と思い、顔を叩いたり、水持ってきて飲ませようとしたり大騒ぎです。
「救急車読んだ方がよくないか?」なんて話も出てました。
結局、呼ばなかったんですけどね。
少ししたら、その友達は意識を取り戻して、普通にしゃべれるようになりましたから。
でも、ちょっと様子がおかしいんですよ。
何がおかしいって、記憶がないというんです。
今日、みんなで怖い話したことも覚えていなければ、肝試しに心霊スポットに行ったことも覚えてないんです。
その日の記憶だけが、すっぽりと抜け落ちてるみたいなんです。
さすがに、記憶喪失のふりをしてふざけてるとは思えませんでしたよ。
白目向いて、泡吹いてましたからね。
そんで、おかしいのはそれだけじゃないんです。
その倒れた友達、その日の記憶をすべて失っているはずなのに、「みんなで裏拍手したことだけは、なんとなく覚えてるわ」って言うんです。
「黒い穴を囲んで、みんなで裏拍手してたよな?」
って言うんです。
僕たち、黒い穴なんて囲んでないんですよ。
そこは普通のアパートの一室ですから、そんなもんありません。
それ聞いたときは、全身が冷たくなりましたね。
あ、僕らはやっちゃいけないことをしたんだな、って感じました。
何が良くないことだったのかは分かりません。
心霊スポットに行ったことがダメだったのか、その直後に怖い話をしたのがダメだったのか、裏拍手がダメなのか、それともそれらの組み合わせなのか。
それ以来、心霊スポットに行くこともなくなりましたし、裏拍手もやらないようにしてます。
まあ、怖い話だけは好きなんで、ときどきネットで検索しちゃうんですけどね。
怖すぎだよっ。
おいら、絶対! 心霊スポットなんか行かないし、裏拍手もしないからね。
前:妖怪ぶるぶる
今日の話は、ちょっと不気味な話かも。
おいら、先に少し読んじゃったんだけど、不気味な雰囲気を感じたよ。
じゃ、一緒に観てこっ。